平成21年度「犯罪被害者週間」国民のつどい この実施報告は警察庁のホームページで公開されています。このページの引用は下記サイトよりダウンロードが可能です。 実施報告TOP>沖縄大会:議事概要>パネルディスカッション 警察庁トップページ 犯罪被害者等施策ホームページ |
■沖縄大会:パネルディスカッション テーマ「犯罪被害者支援とひとりひとりが出来ること」 コーディネーター 藤井 誠二(ノンフィクションライター) パネリスト 川満 由美(~犯罪被害者支援~ひだまりの会okinawa代表) 富山 和枝(社団法人沖縄被害者支援ゆいセンター犯罪被害者直接支援員) 伊藤 義徳(沖縄県臨床心理士会被害者支援担当理事) 村上 尚子(沖縄弁護士会犯罪被害者支援に関する委員会委員長) 宮城 正明(沖縄県警察本部警務部広報相談課被害者支援室長) 伊波 芳規(沖縄県文化環境部県民生活課副参事) (藤井) 先ほどはご清聴ありがとうございました。お聞き苦しい点もあったと思いますけれども、ご容赦ください。 今日は全部で6人、私を入れて7人ですけれども、皆様がいらっしゃいます。被害者支援というのは、いろいろな立場の方がいらっしゃいますけれども、要するにチームプレイなのですね。個々の個別のいろいろなところができるわけではなくて、必ずこの分野はこの方、この分野はここの機関というような、必ずチームプレイでないとこうした犯罪被害者支援というものがなかなかうまくいかないということが私はあると思いまして、そういう意味では、この中では川満さんは被害当事者遺族ですけれど、川満さんは今「ひだまりの会」という、私もお手伝いをさせていただいている自助グループ、そしてその自助グループには県内からたくさんの犯罪に遭われた方、あるいは事件にはなっていないけれどそれに近い状況に巻き込まれた当事者の方、いろいろな方々が少しずつですけれど声を寄せられています。ですから、川満さんの意見を聞きながら、皆さんがお考えになっていること、あるいはこれからやっていけることというようなことをお話しして、議論を展開していただけたらと思っています。 では、最初に、私のすぐ左側に座っていらっしゃる川満さんから、自己紹介含めて、今自分がやっていらっしゃることをお話し願いたい。一人5分くらいでお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 (川満) 犯罪被害者支援「ひだまりの会okinawa」の代表をしております川満由美と申します。 私は自助グループを始めて約3年になるのですけれども、実は2005年2月26日に、夫である川満正則が強盗に遭いまして、路上で殺されるという事件に巻き込まれました。それから、いろいろ自分なりに事件をどう乗り越えていくかということを考える中で、県外のある自助グループに参加するようになったのですね。そこで初めて事件当事者とか遺族の方と接する機会がありまして、県外でしたのでほとんどメールのやりとりだったのですが、初めて自分の気持ちを素直に吐き出せる場所ができた、ということが私にとって被害を受け止めていく中での大切な第一歩になりました。 県内には、そういう犯罪被害に遭った支援の自助グループというのがその当時なかったものですから、私が入っていた県外の自助グループが事情があって解散したのを機に、だったら自分で立ち上げてみようということで3年前に県内で「ひだまりの会」を立ち上げました。 今はまだ会員は少ないのですが、定例会を毎月やっておりまして、その中で、今、藤井さんがおっしゃったように、本当に犯罪に近いような形で子どもさんを亡くされたお母さんとか、それは事故としてしか扱われなかったんだけれども、親としては納得できないお母さんとか、あとは交通犯罪に巻き込まれてしまって、二人の若いカップルが亡くなった事件の親御さんとか、支援傍聴にも行ったのですが、高速道路で二人に追突して、7m下にたたき落とされて、本当に即死の状態で、それが判決で4年という結果を聞いたときに、私としてはご両親がどれほど悔しい思いをしているのだろうかというふうに思いまして、そういうふうな形でいろいろな事件、事故に遭った方々と接していく中で、自分の犯罪被害の支援というものを今手探りの状態で見つけているところです。これからも活動していきたいと思っていますので、機会があればぜひご協力のほう、よろしくお願いしたいと思います。 (藤井) 場所は、ひだまりの会のスペースがあるのですね? (川満) はい、そうです。那覇市安里の、私の主人が学習塾を経営していまして、その学習塾が新校舎をもう一個建てたのを機に、旧館のほうのスペースが空いたものですから、そこの最上階を改造しまして、ひだまりの会の事務所として今活動しています。 (藤井) 定期的にそこで集まりを開かれていて、基本的にはそこは原則オープンですから、そこにいろいろな方がいらっしゃるということですね。 (川満) はい。 (藤井) ありがとうございました。では、富山さん、お願いします。 (富山) 私は、社団法人沖縄被害者支援ゆいセンターの相談員として、直接支援として今やっているところです。 社団法人沖縄被害者ゆいセンターの説明をさせていただくと、それ以前にも「心の支援センター」というのがあったのですが、平成16年に法人として立ち上げられました。19年に直接、早期の支援の機会が得られました。それで、私たちも事件当初からできるだけ早期に関われることになったのです。私たちがやっていることは、電話相談、それから電話相談によって面接が必要な場合は面接、その中で話し合われたことで被害者の方がどういうふうな状態であるか、そこから弁護士さんが必要だったり、精神的にすごいショックを受けまして動揺していらっしゃるときは病院に付き添っていくということをやっています。 大体は電話が主なのですが、直接いらっしゃる方もいますし、その中から、その人に何が必要なのか。精神的に動揺していらっしゃるし、本当に被害に遭った直後は、何をしていいかわからないということのほうが多いと思うのです。だから、自分の名前さえも書けなくなったり、住所とか書かれない。「漢字さえ忘れてしまった」とおっしゃる方がかなりいらっしゃって、そういう方のお手伝いをして、例えば役所に行って手続をしなければいけないことだとか、あと病院に行くときも保険手帳だとか、住所とか名前を書かなければいけない場合に、そういう方のお手伝いとして行っています。 だから、本当のことを言って、ただそばにいるだけで落ち着いてくださるということで、大した力にはなっていないかもしれませんけれども、付き添っています。それから、弁護士さんが必要なときも手助けしますし、法廷に傍聴に行かれるときでも、一人でどうしても行けない。性被害の場合は、行ったときに、「大丈夫ですか」と言っても硬直してしまったり、それで遮へいをお願いしたり……。 (藤井) 遮へいというのは、法廷の中で見えないように、傍聴席とバーの内側との間に半透明ですか、壁をつくるということですね。 (富山) そうです。それで、犯人の方にも見えないように、それから傍聴席の席の方にも見えないように、囲むような形とか、あとはビデオリンクだとか、ビデオのほうで顔だけを裁判官とかそういう方に見えるようにという、そういうふうなお願いをしたり、できるだけ被害者の方に添うような形でやっています。 例えば、小さいことですけれども、法廷に付き添うときでも、ティッシュだとか飲み物とか、あといたたまれなくなって席を外すときには、いつでも声をかけてくださいということで添っていきましょうと。傍聴が始まる前に、そういうことを一応お話しして入っていくのですね。そういうことをしたり、あとは通院しなければいけないときとか、今のように沖縄だけでなくて、例えば沖縄から県外に出たときに、向こうで事件に遭ったとか、そういう場合は向こうの被害者支援のほうから依頼が来たりしますので、沖縄のご両親とかに直接支援をしたりしています。大体、そういうふうな形で私たちは行っています。 (藤井) 今、付き添い傍聴に行ったり、身の回りのお世話をされるスタッフというのは、全部で何人くらいいらっしゃるのですか。 (富山) 常時動けるのは12、3人です。あと電話での相談もありますので、当番制で電話相談にも対応しています。 (藤井) 12、3人で実働部隊というか、支援傍聴とか、付き添い傍聴とかで人数は足りていますか。 (富山) 本当のことを言って、直接にそういうのは東京とかいろいろな研修を受けてこないとできないのですね。ですから、研修を受けた人たちしかできないので、もっとそういうふうに負担がかからないような形で研修できる人たちが多くなれば、もっと増えるのではないかと思いますが、今のところ、研修をするのにもお金がかかりますので、それ1回だけではなくて、年に何回か行って、向こうの被害者の支援活動とお互いに情報交換したり、連携をとらなければいけないので、かなり、今、難しいところです。 (藤井) 少し補足をすると、研修というのは東京のいわゆる大もとですね、支援センターの本部(全国被害者支援ネットワーク事務局)がありまして、東京だったら都民センターですね。東京都に都民センターというのがありまして、これは民間がやる被害者支援の草分け的な存在でありまして、そこに講義というか、受講するのですね。受講してトレーニングを受けて、そこで初めて電話相談員とかあるいは支援の資格を得るといいましょうか、そういうようなことが必要だということですね。 (富山) はい、そうですね。普通の電話相談でしたら、ゆいセンターのほうでも年に1回、そういう初級クラスとか中級クラスというふうにやっています。 (藤井) なるほど。またその話を後でお聞きするかもしれません。では、伊藤先生、よろしくお願いいたします。 (伊藤) この「国民のつどい」というところに臨床心理士という立場の代表を置いていただけることに、すごくありがたみを感じています。今回、4つの地域でこの「国民のつどい」が行われているようですけれども、臨床心理士の代表が出ているのは、この沖縄だけということで非常に光栄に感じております。 県の臨床心理会を代表して参りましたけれども、こちらは臨床心理士という専門資格を持つ者が160名くらいおりまして、この専門職の職能団体になっております。職能団体ということですので、基本的には内部の技術研鑽、この後、ちょっとお話をしたいのですが、臨床心理士の被害者支援における役割というのも、意外と小さいというふうに自分自身も考えているのですが、そういうものをしっかりできる技術の研鑽を第一にしながら、こちらの中だと「ゆいセンター」のほうにも研修会の講師を派遣させていただいたり、県の警察本部の被害者支援室のほうにも3名ほど心理士がいて、委嘱を受けて相談活動をしたりしております。 会の活動というよりも、臨床心理士というのが何をする、特に被害者支援、犯罪被害者支援の中でどういうことをできるのかということを紹介させていただきたいのですが、臨床心理士というのは心の働きをできるだけ通常、普通の状態に近づける、そういう専門家だと思うのですね。例えば、誰かと喧嘩したりしたら、みんな、嫌な気持ちになると思うのですが、何かつらい経験があったときに、嫌な気持ちになる、腹が立ったりする、これは誰にでも生じる普通の心の働きだと思うのです。ただ、この気持ちがあまりにも長く続いたり、その気持ちが強すぎて、日常生活も送れなくなる、そんなふうに、その気持ちが問題になるようなことがあった場合、これは普通の心の状態よりも、幾分、心がややこしい働きをしてしまっている。そういった場合に、心がスムーズに働けるように、元に戻すお手伝いをするというのが基本的な我々の仕事だと思っております。 こういう視点から犯罪被害者支援ということを考えますと、犯罪被害に遭われた方、ご遺族の方、それはそれは非常にショックを受けたり、多くの苦難に見舞われることがあると思うのです。そういう状況で、様々な心理的反応を生じてしまうというのは、これはもうそういう経験をされた方にとっては通常の反応であるのかなというふうに思うのです。ですから、通常でない反応をした場合に、その通常に戻すというのが我々の仕事だと考えますと、犯罪被害を受けられた方に対して我々ができることは、犯罪被害を受けられた方が望んだときに、お話をされることを辛抱強く耳を傾け、先ほど藤井さんの話にまさにありました「傾聴力」ということだと思いますが、しっかり耳を傾けて、その「理解してほしい」という気持ちにできるだけ添うということになるのかもしれません。 あともう一つ挙げるとすれば、人の心というのは、時間の経過や出来事に応じて、様々に変化する、そういうものだと思いますので、犯罪被害に遭われた方、その後も警察とか、司法の手続とか、また様々な環境の変化があって、これに伴って、いろいろな心理的変化というのが生じると思うのです。こういうものに対して、この先、どういう状況で、どういう出来事が生じて、そのときどんな気持ちになることが予想されますということを心理学の知識や経験に基づいて前もってお知らせしておくことで、環境と自身の変化に対する心の準備というんですか、こういうものをするお手伝いもできるかなというふうに考えております。もちろん、犯罪被害を受けられた方、またそのご遺族の中でも、「普通」と呼べないかもしれないんですが、その反応がよりこじれて、余計つらい状況を経験される方もいるかなと思うのです。最近、テレビなどでも「PTSD」とか、「うつ病」という言葉をよく耳にするようになりましたが、そういう状態に陥った場合には、普通の心の状態を取り戻すことを心理療法を用いて支援することもできるかと思います。 こういうふうに話していてもそうなんですけれども、先ほどから申している普通の反応を取り戻しても、それはつらさを取り除くということではないのかなというふうに感じるのですね。つらい経験をされた方にとっては普通の反応であるということを考えると、それを取り戻したとしても、やはりつらいことに変わりはないのかなと。そういう意味で、我々にできることはすごく小さいことかもしれないなと思うのですが、こういう場に臨床心理士という声がけをいただくように、何か我々にもできることがあるのだろうなと感じておりますので、できることを一つひとつ、しっかりやっていくこと、これが我々に求められていることかなというふうに感じています。 (藤井) 伊藤さん、犯罪被害者当事者でもいいし、遺族の方でも、臨床心理士さんに診てもらうというか、カウンセリングを受けるためにはどうすればいいんですか。診療内科に行けばいいの?大学に行けばいいんですか。琉大に行けばいいの? (伊藤) 琉大にも是非来ていただければと思いますが、臨床心理士は今、全国で2万人弱、沖縄県内で160人強おります。数が足りているかというと、そうではないと思うのです。どこの病院、相談機関に行けば必ず臨床心理士に会えるという状況にはなっていないなというふうに思います。 これは細かく調べていただければ、病院の資料、ホームページなどを見ていただければ、臨床心理士の配置がある・ないということも書かれてはいるのですが、我々の責任の一つとして、臨床心理士というものがどこにいるのか、どういうふうにすればそういう者と出会えるのかというのも情報発信もしていきたいなというふうには考えております。 (藤井) 続きは、また後で。では、村上先生、よろしくお願いします。 (村上) 沖縄弁護士会の弁護士、村上です。弁護士会と弁護士の取り組みについて少しご説明させていただきたいと思います。弁護士会というのは各県、すべての県にあります。強制加入団体なので、弁護士は自分の事務所がある県の弁護士会にすべて加入しています。沖縄には沖縄弁護士会というのがあるのですが、その中に犯罪被害者支援に関する委員会を設けております。今、各県、ほぼ全県、この犯罪被害者を支援する委員会が設置されています。取組としては、本当に最近というか、何十年も前からあった支援の委員会ではないのですが、今のところはすべての県でそういう委員会があります。委員会の活動としては、県とか警察とか、沖縄では「ゆいセンター」ですけれども、そういう関係機関と連携をとって連絡の交換をやったり、あとはそういうところに弁護士として法律的なことの何か助言などができれば、そういう研修とか講師の派遣をしたり、あとは県で起きた具体的な事項についての研究や提言なども委員会でやっています。 近年の沖縄弁護士会の提言では、米兵による暴行事件があった際に、「マスコミが被害者に二次被害を与えないように」というような会長声明を出したり、マスコミへの申し入れをやったりもしました。 あと、最近では、裁判員裁判が始まっていますけれども、そこで性犯罪被害者のプライバシーがどのように守られるべきか、というような申し入れを検察庁とか、裁判所に出したりしています。 あと、日本司法支援センター、今日の後援にもなっていますけれども、法テラスとの連携ということで、弁護士の中で犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士を紹介する制度が法テラスのほうにはあるのですが、そういう弁護士の名簿を弁護士会で調整して情報提供したりとか、あとは法テラスで無料法律相談、その中に犯罪被害者の方も当然いらっしゃるのですが、法律相談を行ったりもしています。 弁護士の取組なんですけれども、結局は動くのは一人ひとりの弁護士なのですが、弁護士が被害者支援として何ができるか、やっているかというと、一番最初は法律相談ですね。法律相談を受けて、被害者の方、被害者遺族の方が何を望んでいるか、法律的には何ができるかというような相談を受けます。その後、刑事事件と民事事件というふうに分かれるのですが、犯人が逮捕されて刑事裁判にかかるという場合には、刑事事件における支援ということで、一番最初に支援することは被害届けを提出したり、まだ事件として立件されていない場合には告訴とか告発を代理人としてやったり、援助したりというようなことがあります。 あとは、警察の捜査の進捗状況とか、警察から検察庁に事件が行って、そこで処分結果がどういうふうになったのか、今、捜査がどうなっているのか。これは被害者の方が一つひとつ問い合わせるのもきつい、あと専門用語がわからない。警察とか検察庁のほうから連絡が来る場合もあるのですが、随時もらえるわけではないので、警察とか検察庁との連絡を弁護士が間に入って取り合ったりすることもあります。あと、事情聴取に同行したりすることもあります。あと、加害者と裁判せずに示談ができそうな場合は、代理人として示談交渉に関わったり、加害者とのやりとりを弁護士がやったりすることもあります。 社会的に大きな事件では、マスコミからの取材がたくさん来たり、あとは被害者自身に話を聞きたいということで、自宅にたくさんのマスコミの人が待っていたり、何度も訪ねられたりということがあるのですけれども、そういう場合にはすべて代理人を通してやってくれということで、報道機関との折衝などをする場合もあります。実際に裁判になった場合には、刑事裁判における支援ということで、証人尋問とか意見陳述、これは被害者の方が証人になる場合に証人尋問をどういうふうにするかというようなことの援助をしたり、意見陳述をしたいという場合には意見陳述をどういう内容でやろうかということを相談して援助したりします。 去年12月から被害者参加制度が始まっていますけれども、それにおける援助ということで被害者参加代理人ということで、被害者の方と一緒に裁判に参加して、一緒にバーの中に入って、検察官の隣に座って、被告人に質問したり、実際に証人の人に質問したりというようなことをやる場合もあります。 あと、民事賠償の手続をやりたいという場合は、裁判をやらないで示談で民事賠償請求ができる場合に示談交渉をやったり、裁判をしなければいけないときには、裁判の代理人ということで、弁護士がやるというような取り組みをやっています。以上です。 (藤井) 多岐に渡っていますね。皆さんご存じだと思いますけれども、今は裁判員制度の導入を前にして「公判前整理手続」というのがあって、それに対しては被害者側の弁護士は入れないですね? (村上) そうですね、入れないです。 (藤井) そういう制約があったり、改善していかなければいけない点はいろいろあると思うのですけれども、いろいろな状況にわたって弁護士さんの役割は多いですし、実際には、いざ法廷、特に民事等々になっていくと、弁護士さんでしかわからないというか、できないことがいっぱいありますから、支援という意味では。ただ、基本的にはやはり法廷支援ですね。 (村上) そうですね。 (藤井) 司法的な支援ということになると思うのですが、そこはやはり弁護士さんの独壇場というか、弁護士さんしかできないようになっています。そういう意味で言うと、検察官も支援といったら支援なのですね。もちろん弁護士さんと立場は違うけれども、例えば遺族の遺影を法廷に持って入るときに、これ、最初、だめだと言われていたんですね。だめだと言われているのを検察官が裁判長に「何とかしてくれ」と言って交渉した、例えば本村洋さんのケースとか、ありますね。そういう場合は、検察官が「これは被害者感情に考慮して、裁判長に何とかやってくれ」ということで頼むわけでしょう。そういう意味で言うと、わりと検察官とも被害者支援という一点で、要するに被害者側につくということは、要するに被告人につくわけではないから、わりと検察官とのコミュニケーションも大事になってきます、ということですね。 (村上) そうですね、連携することが必要ですね。 (藤井) そうですね、はい。では、警察から宮城さん、よろしくお願いします。 (宮城) 警察本部・被害者支援室の宮城と申します。よろしくお願いします。 やはり警察というところは、皆様方のイメージとしまして、当然、事件等が発生した場合には、犯人を捕まえる、いわゆる逮捕したり、検挙する、それによって被害者の被害の回復を図っていくというイメージがあると思います。この犯罪捜査という過程の中で、先ほど藤井さんも触れていましたけれども、被害内容を聞いていく捜査過程の中で、被害者のほうに、また事件のことを思い出させてしまうというような形で、二次被害を与えてしまう、こういったこともややもするとあるのです。そういう中で、今、警察としては、捜査と被害者支援とは同時進行するものだと。つまり、車の両輪と一緒で、重要な施策の一つと捉え、推進しているところであります。 その弊害を無くすために、各警察署などに指定被害者支援要員を指定し、運用しております。警察署には、刑事課、生活安全課、少年課、あるいは交通課といろいろありますけれども、捜査あるいは事故を取り扱う課のほうに、捜査員とは別に被害者支援に従事する専従員を指定しております。事件が発生した場合には、当然、全員で捜査に当たっていくわけですが、その中で「君と君は被害者支援の担当だ」ということで指名しまして、指名された職員がそれに当たっているということであります。 主にその職員を通じて警察による幾つかの施策を行っているわけです。ここで少し紹介させていただきたいのですが、施策の一つに情報の提供というものがあります。当然、被害者ご本人、そのご家族、あるいはお亡くなりになった場合のご遺族の方々にとって、事件の概要とか、その後どうなったかということは非常に関心が高い事項であります。これらについて、支援要員等が、捜査に支障のない範囲内という限られた部分でありますけれども、可能な限り、捜査の進捗状況とか、被疑者の逮捕、あるいは送致、起訴されたなど、そういった情報を提供していくということを努めているところであります。 二つ目は、先ほど臨床心理士の伊藤先生からもお話がありましたが、被害者の精神的ケアをするということで、被害者等カウンセラー及びカウンセリングアドバイザー制度を県警のほうで設けており、精神科医4名、臨床心理士3名、合計7名の先生方に委嘱し、いろいろな犯罪被害者の方々、あるいはそのご家族の方々に対するカウンセリングを実施しているところであります。カウンセリング費用を公費で負担するものであり、回数の制限もなく、事件を担当している警察署と被害者等の方々とで調整していただいて、その要請に基づきまして、我々支援室のほうが窓口になり、カウンセラーの先生とも調整してカウンセリングを実施するという制度がございますので、是非こういった制度があるということを今日ご来場の皆様にはご承知置きいただいて、何らかの機会に、必要とされる方などに教えていただければと思います。 三つ目でありますが、経済的救済であります。先ほど藤井さんのほうからありましたように、犯罪被害給付制度が国にございますけれども、通り魔殺人などの被疑者、いわゆる犯人側に損害賠償能力がないというようなとき、被害者のほうは、例えば一家の大黒柱を殺されたなどの状況も考えられますが、そういった場合、大きな経済的負担が生じるわけです。こういったものに対して、一時金ではありますけれども、申請に基づき、国のほうから給付を行う、これらの手続を行っております。 これ以外にも経済的負担の軽減を図るため、例えばお亡くなりになったときの検案書料、いわゆる死亡診断書料の負担であるとか、あるいは遺体を搬送するときの費用であるとか、あるいは性被害犯罪に遭った場合の初診料とか、緊急避妊の費用とか、そういったものを警察のほうで負担しております。 こういった幾つかの施策を実施していますけれども、やはり警察のみ、あるいは今こちらにいるメンバーそれぞれの分野のみではなかなかできない部分がありますので、お互いに連携しながら、あるいは今日ここにいらっしゃる皆様方、県民一人ひとりが犯罪被害者等の方々というものをよくご理解いただいて、みんなで支援をしていくということによって成り立つものだと思っております。これからも被害者支援に関する施策の推進を図るため、努力してまいりたいと思っております。以上です。 (藤井) 僕は、警察の犯罪被害者支援室というのは非常に重要な役割を持っていると思います。犯罪に遭った場合、まず当事者や遺族が最初に出会う人間は警察官なんです。それはそうですね、事情を聞かれたり、いろいろな形でまず警察官。ですから、まず警察官にすがりたいという気持ちというか、いろいろなことを伝えたいという気持ちは当然あるわけであって、その第一印象というものがものすごく大事なのですね。ここはとても難しい問題があって、まだ犯罪の全容がわからない場合も多いじゃないですか。これは、はっきり言いますけれど、例えば加害者が身内にいる可能性がある場合は、まだはっきり誰が被害者で誰が加害者かわからない場合とか、あるいはもちろん未解決というか、加害者がわからない場合も含めてなのですが、そういうときは被害者に対する対応というのがいろいろな意味でナーバスにならざるを得ないところなのです。でも、そういう面もありながらも、実際には被害者に対するファーストコンタクトというのは警察官なので、これはものすごく大事。先ほど打ち合わせのときにも言ったのですが、ドイツの「白い輪」という、犯罪被害者支援の歴史もある大きな団体があるのですが、これはまず警察官が判断をして、警察が例えば伊藤先生のようなお立場のほうへ繋ぐとか、あるいは村上先生のほうへ繋ぐとか、富山さんのほうへ繋ぐとか、様々な民間、あるいは自助グループのほうへ、川満さんのほうへ繋ぐとか、そういうコーディネーター役なんかも、実はヨーロッパなどではやっているのですね。そういう意味では、冒頭にも言いましたとおり、ネットワークがすごく大事なのです。だから、ここにいる6人の方々、お互いがどういう役割を持って、どういうことができて、お互い補完し合えるのかということを常に。でも、連絡会議みたいなものはないんですね?今あるんですか? (宮城) 被害者支援の連絡協議会というのがあります。あと、民間も含めてございます。 (藤井) そういうのがすごく大事になってきますね。そこで、このケースはこうだった、このケースはこうだったというようなことの情報交換、ケーススタディを積み上げていくというのが、いろいろな技術というか、スキルを磨いていく意味でいいのではないかなというふうに常日頃思っております。 では、伊波さん、よろしくお願いします。 (伊波) 沖縄県文化環境部県民生活課の伊波でございます。 沖縄県では多くの部署で、いろいろな事務を扱っています。女性問題とか、消費生活、児童虐待、交通事故、医療含めて多種多様ありますけれども、県民生活課で取り組んでいる犯罪被害者支援の取組状況についてご説明いたします。 まず一つ目といたしまして、犯罪被害者等支援総合窓口の設置でございます。沖縄県におきましては、犯罪被害者等基本法及び同基本計画に基づきまして、平成18年4月1日に職員を配置するとともに、11月には沖縄県犯罪被害者等支援総合窓口の名称で直通電話を開設し、犯罪被害者等の相談に関し、適切な機関への橋渡しを実施しております。 二つ目としましては、沖縄県犯罪被害者等支援庁内連絡会議の設置でございます。先ほど藤井さんがおっしゃったように、いわゆるネットワークでございます。これは県庁内のネットワークということでございます。犯罪被害者等基本法に基づく犯罪被害者等に関する施策を総合的かつ効果的に推進することを目的として、教育庁及び沖縄県警察を含む県庁内の関係18課相互の情報の共有及び連携を図るための連絡会議でございます。 三つ目として、市町村犯罪被害者等施策担当課長会議の開催でございます。こちらも市町村とのネットワークづくりということで、会議を開催してございます。これは市町村との連携協力を促進すること、県と市町村が被害者問題に関する認識や支援情報を共有することを目的としてございます。 四つ目としては、沖縄県犯罪被害者等支援ホームページの開設でございます。ホームページで犯罪被害者等支援に関する相談機関の連絡先、犯罪被害者等支援に関する事業概要等の情報の提供を行ってございます。 次に、県政広報テレビ番組。沖縄県では広報テレビ番組として「うまんちゅひろば」を放送していますが、その活用でございます。犯罪被害者支援の重要性や各種施策の取り組み、相談機関などについて、広報テレビ番組を通して広く県民に広報しております。昨年度も放送いたしましたが、今年度は来週の土曜日と日曜日、11月28日と29日に放送を予定してございますので、どうぞご覧いただきたいと思います。 次に、リーフレットの作成と配布でございます。38カ所の相談機関を掲載した沖縄県犯罪被害者等支援総合窓口のご案内というリーフレットを作成して、国、県、市町村の関係機関団体やモノレール駅構内及びコンビニのローソン等で配布してございます。パネル等を展示しているところにも置いてございますので、後でご覧になっていただければと思います。 次に、犯罪被害者等支援に関する手引きの作成及び配布でございます。犯罪被害者等が平穏な生活を取り戻していく上で、必要とされる支援制度について取りまとめ、46の機関の犯罪被害者等支援に関する各種事業の概要を記載した手引きを19年度、一昨年ですけれども、作成し、昨年度、それぞれの関係機関窓口に配布しております。 最後になりますけれども、講演会、研修会などの開催がございます。犯罪被害者遺族の方をお呼びして、犯罪被害者週間における啓発事業の一環として開催しておりまして、19年度には地下鉄サリン事件被害者の会の代表世話人の高橋シズヱさんをお招きして開催してございます。昨年度は、これは窓口職員の資質向上を図る趣旨も含めて、沖縄被害者支援ゆいセンターの常任理事の稲田先生をお招きして、窓口職員などの資質向上を図るための「犯罪被害者等に接する際の留意点について」ということで講演会を開催しております。沖縄県の県民生活課のほうでございますけれども、啓蒙・啓発を主にやっておりますので、こういう取り組み状況でございます。以上です。 (藤井) いろいろな項目があって、細かくいろいろあると思うのですけれども、先ほども昼飯を食べながら言ったと思うのですが、犯罪被害者のこういう支援の問題というのは、やはり専門性がとても大事で、それはとりわけ伊波さんとか宮城さんのようなお立場の方、行政の側におられる方が求められることでもありますし、もちろん今日会場にいらっしゃる支援に携わる人たちも、やはり一定の専門性が求められます。僕は、だから「窓口、3年で代わるというのはちょっと早いですよ」みたいな話をさっきしたと思うのですが、犯罪被害者遺族とかにとっては3年って短いんですね。あっという間なんです。川満さんも、前、お聞きしましたけれども、特に事件の当時の記憶、ないんです。そのくらいショックなのですね。ですから、3年なんてあっという間で、3年のうちに裁判も全部終わっているなんて、何だ?みたいな、そういう状況なんです。 行政であっても、警察であっても、窓口の人がそういう専門性を持って、そして人間関係を持って、「あの人に相談したらちょっといいな」とか「あの人に相談したらいいアドバイスがもらえるな」というように、そういう地域での人間関係を僕はつくってほしいなと常々思っているのですけど、今の行政システムだと短い期間で異動しなければいけないというのがある。 これは新聞記者でも同じなんです。今日も新聞記者の方、いらっしゃると思いますが、特に沖縄って赴任とか3年とかなんですね。川満さんだって、昔、取材した記者が今はもういないよね。 (川満) はい。 (藤井) 最近来た記者に、また一から説明しなければいけない。昔、旦那さんが刺されて、それからこうなりましたって説明していくってものすごい苦痛なんです。一から説明するって。光市事件の本村洋さんが、これも内閣府がやったものなのかな、被害者の検討委員会の中で提案したのは、被害者カードを作って、「私はこういう被害者です。遺族です」というふうに、これを読めば大体のことはパッと相手にわかる、というのを作ったらどうかという提案までしたくらいなのですね。そうすると、説明を省けるということなんです。 ですから、担当者が代わるというのは、これはメディアも含めて、行政も含めて、本当の支援と言うなら長い間いてほしいというのがあるし、それから長い間いていただけると、これは何よりも、例えば「伊波さん、頼りがいがあるよ」とか「宮城さん、よく話を聞いていて、いろいろわかっている人だよ」みたいなことが遺族の中で回ってくると、頼りがいが生まれる。そうしたことって、すごく大事なんです。やはり個々の人間関係の濃淡みたいなものがすごく大事で、これは致し方ないと批判されるかもしれませんけど、伊波さんや宮城さんは窓口ではないんですね、血の通った人間ですから、特に被害者にとってはね。これは無理な注文と言われるかもしれませんが、なるべく長い間いていただくことによって、専門性と例えば「ひだまりの会」なら「ひだまりの会」、あるいは「ゆいセンター」に集まっていらっしゃる被害者の方との関係を構築されていくというのも僕はすごく大事なことかなというようなことも、お話を聞きながら思いました。きっとお二人は精一杯やっていらっしゃると思うのですが。 皆さんの手元に質問票があります。それに、皆さん、例えば名指しで伊藤さんに聞きたいとか、富山さんに聞きたいとか、名指しで書かれてもいいですし、あるいは全体でもいいです、それはどなたが答えるか僕が取捨選択しますので、書いていただいて、今、回収の方が回るのでその方に渡してください。それをこちらで見て、皆さんとそれを選んでお答えを後半にしたいと思っています。 川満さんにお話ししたいのですが、こうした被害者支援の場合、特に事件に遭われた直後から裁判が始まる、裁判はすぐに終わりませんでしたけれども、一審とずっと続いていく中で、当然、川満さんにとっては初めての体験だし、さっき言いましたけれども、ところどころ記憶が落ちているくらいのショックだった。でも、その中で、やはり支援等が欲しくて、実は川満さんは、沖縄には支援というか、連絡をとる自助グループがなかったというか、ぴったりするところがなくて、東京の自助グループにアクセスされているのですね。そこで僕も知り合っているのですが、最初もがいている状態というのか、その中で、最初にもし沖縄でこういう支援があったらというふうに今思い返してお考えになることはありますか。 (川満) 事件当初というのは、私の場合の話なのですが、当初の事件は全く記憶にないのですね。それから、1カ月くらいたったときに、日常生活は日頃から送らなければいけないので送っているのですが、例えば今日が何月何日で何曜日だというのを朝起きてカレンダーを見て、今日は5月5日で水曜日でお弁当の日だなと思って、朝食の準備を始めるのですが、朝食の準備を始めて10分くらいして、今日、何月何日の何曜日だっけ?とまた忘れてしまうんです。そういうふうな記憶の欠乏とか、あと季節感が全くなくなるのですね。子どもが生まれたばかりだったので、私が仕事に行っている間、おばあちゃんが世話をしていたのですが、休みの日は私が見ているのですが、秋が近づいてきて、朝夕寒くなってくると、衣替えの時期なんだけれども、季節感も何もないものだから、寒いも暑いも何もわからないんです。おばあちゃんに「あんた、赤ちゃんがくしゃみしていて、長袖も着せてあげないの?」と言われて、初めて「あ、もう11月なんだ」とわかるんですね。 そういう中で、私が一番心配だったのは、事件当時、上の子が3歳と3カ月で、下の子が生まれて8日目ということだったので、この子たちが父親の死というものを受け止めるときに、私はどう対応したらいいんだろうかということがとても悩みだったんです。それで、まず最初にカウンセリングを実は受けました。臨床心理士の先生もいらっしゃる中で大変申しわけないんですけれども、私は前もって「子どものことで相談したい」というふうに内容を言ってカウンセリングをお願いしたのですが、行ってから、まず聞かれたのは「どんな内容の事件ですか」とか「そのとき、あなたはどう思いましたか」とか、事件のことを集中的に聞かれたんですよ。私は事件のことを思い出すのが当時とても苦痛だったので、あまり話したくなかったんだけれども、そればっかり聞いてくるものだから、話さざるを得ないのですね。結局、1時間たった途端に、「1時間たったので、これで終わりです」と言われたんです。「えっ、子どものことは何一つまだ話していないですよね」と言って、「今後、子どもにどういうふうに対応したらいいんですか」というふうに聞いたら、「お母さんが立ち直れなかったら、子どもさんも立ち直れません」と言われたんですね。こういう対応って、どうなんでしょうか。 (藤井) これは伊藤さんしか答える人はいませんね。 (川満) そのときすごくショックを受けて、こんな回答の仕方があるんだろうかと。大人の受けたショックと、子どもがこれから父の死というものを考えるようになることも、成長の速度って全然違いますよね。それを考えたときに、その一言で済ませていいものだろうかとすごく疑問に思って、別のカウンセラーの先生に出会うことになったんですけれども、最初のカウンセリングですごく傷ついたというのは事実なんです。 (藤井) 実は、伊藤さん、そういう方、すごく多いんですよ、これはご存じだと思いますけれど。だから、臨床心理士ジプシーしている人も多いんです。これは村上さんもご存じだと思うんですけれども、弁護士ジプシーしている遺族も多いんだよね。だから、自分とぴったり合うというか、自分の主張を「うん、うん」と聞いてくれる弁護士を探して歩くわけ。 先ほども例に挙げましたけれども、光市の本村洋さんなんかは、とにかくよくわからないから、山口市内の弁護士事務所の看板見つけてフラッと入ったら、「君は何が言いたいんだ。加害者を死刑にしたいのか。無理だよ」と言われて帰ってきた。それで、弁護士を信用できなくなったと。ファーストタッチはもちろん警察なんですけれど、その次は臨床心理士さんとかカウンセラーさんとか弁護士さんなんですね。川満さんは、それはかなり最初のつまずきなんですよ。伊藤さん、聞かれてどうでした? (伊藤) 非常に胸が痛いというんですかね。こういう立場から言わせていただいても、本当に申しわけなかったなというふうに思います。 (藤井) 伊藤さんが謝ることではないです。 (伊藤) そうかもしれないんですけれども、立場としては、ほんと、そういう気持ちですね。最初に会われたカウンセラーも臨床心理士の人ですか。 (川満) はい、そうです。 (伊藤) そういう意味で、本当に申しわけなかったなというふうに思うのですが、被害者支援の立場ということを考えたときに、先ほどお昼を食べながらのお話のときにもお話ししたのですが、支援をする側も話を聞くことでショックを受ける、これは臨床心理士も、恥ずかしながら、人間なので同じなのかなと思うのですね。本来、そうではいけないんですけれども、臨床心理士も話を聞くうちに自分の心が揺らいでしまって、これもあるまじきなんですけど、自分自身の、支援者側の心理をまず落ち着かせるために、相手のためではなくて自分のためのその場をしのぐような言葉というのを投げつけてしまうというか、言ってしまう。 だから、本当に川満さんが求めていたものに答える前に、支援をする側の心理士が、何ていうんですかね、自分の知りたいことというか、そこからしか聞けないみたいな、視野が狭くなってしまって、川満さんの求めることに応えられなかったということはあったのかなと思います。 自分自身もそういう仕事をしていますと、こちらも生身の人間なので、その経験に耐えられなくなる、その弱い心がこちらもあるというのは少しわかる気はします。こういうことが少しでも少なくなって、本当に求められる方への支援ができるように日々研鑽はしますし、臨床心理士会の中でも技術向上、研修会の企画とかいうのもやっているのですが、それでもお力になれなかったことは非常に残念です。 (藤井) 多分、それは臨床心理士の方が、前半に主にお話しした「犯罪被害者とは何か」というそもそも論というか、原則論が先にないとやっぱり向き合えないと思うのですね。普通に心に何か問題を持っている人とは、やはり違うじゃないですか。明らかに犯罪被害というものが源泉なわけですから、そこが一番大事なところかなと思います。 ちょうど、今、質問票が回収されまして、これを織り交ぜながら終わりまで行こうと思っているのですが、今の伊藤さんのお話について、「相談する場合の診療費は幾ら」というのがあるんですけれども、そういうのはあるんですか。 (伊藤) 臨床心理士というのも国家資格ではないのですね。国の認定資格でありまして、そういう意味でまだ社会的な認知も低いところです。ですから、沖縄県内では臨床心理士だけが独立のカウンセリングルームを持っているという人は1人しかいないです。どこかの機関、病院、精神科とか診療内科、クリニックとか、あとは教育相談機関とかに籍を置きながら、その機関の補助として仕事をしているということになります。ですから、相談料というのは相談機関ごとに違うと思います。 (藤井) 村上さんにも同じような意見が来ていて、これは僕の意見ですけれど、弁護士というと今までどうしても刑事弁護、つまりは加害者の弁護を中心にやってきた方が多いのですね。これはある地方ですけれど、被害者支援弁護士の集まりがあって、そこに被害者の何人かが行ってみたら、きのうまで刑事弁護のバリバリの人がいてびっくりしたというのがあって、今まで加害者弁護をしていて、被害者弁護って急にできるの?みたいな不信感がすごくあったりするんです、実際問題。 それゆえに、弁護士さんの中でも「犯罪被害者とは何か」という基本的な勉強というのはすごくされてきていると思うし、今後も必要だと思うのですけれども、そういう中で、今の被害者支援というのは、刑事弁護ではないけれども私選でつくわけですね。今は被害者への国費による弁護士付与というのは法律でできたんですね? (村上) ええ、被害者参加に関しては国選の制度があります。 (藤井) 先ほど先生がおっしゃった被害者参加の付き添い弁護士については、これは国費で補償されるようになっています。質問で、被害者支援の弁護料、正式に言うとこれは弁護料ではないのですが、お金はどうなのかというのがありますが、これは国費で払われるということでよろしいですか。 (村上) 被害者参加制度を使って刑事裁判に被害者が参加する、その場合の被害者参加弁護士に関しては国費でできるのですね。ただ、先ほど私が言ったように、例えば事件後すぐに相談して、告訴したいとか、あと警察の事情聴取に同行してほしいとか、そういうのは国費でできるという制度が今ないので、実際は費用負担が必要なのが原則なんですが、今、実は日弁連の事業で、経済的な資力要件はあるのですが、弁護士費用を払うのが厳しいという場合には、本人に経済的負担をさせないで弁護士の支援が受けられるという制度もあります。 (藤井) それは、お金がある程度これだけ預金があるとか、何か保証があるとか、そういう何か必要な部分がたしかありましたね? (村上) そうですね、預金現金がどのくらいあるかというようなことを弁護士が聞き取りするのですが、そんなにハードルとしては厳しいものではないと思います。 (藤井) でも、預金が10円しかないとか、そういうのはだめでしょう? (村上) むしろ経済的に苦しい方の援助なので、お金がないという人に対しては、本人の負担なしで弁護士が援助できるという制度ですね。 (藤井) なるほど、わかりました。 これは宮城さんにお聞きすればいいのかな。犯罪被害者といっても、例えば事件になって遺族になってしまった場合、あるいは実際に危害を受けられて被害者として認定された場合もありますけれども、冒頭にも言いましたけれども、事件なのかどうなのか、被害者なのかどうなのかわからないケース、あるいは例えばストーカーなんだけれど、何も起きていないからなかなか動けないとか、そういうことがたくさんあると思うのです。実際に犯罪被害の何千倍、何万倍も実はそういうことがあると思っていて、そういう相談が警察にもたくさん寄せられていると思うのですけれど、これはどういうことなのかな。「以前、犯罪被害に遭って専門の相談をしたところ、再三、被害届を出すように言われた。私の場合は、しばらく落ち着いてからと何度も説明したけれど、1日に何度も出せと電話があった。次の被害者が出たら、どうするんだ」と、これは警察が言ったということだと思うのですね。 それっていうのは、警察というのは何らかの書類が出ないと、要するに被害者を生まないためということですね。そういったことは動けないものなんですか。 (宮城) 例えば、犯罪捜査という部分では、当然、被害の届け出があって犯罪捜査が成り立っていくものもあるわけですけれども、そうではなくて、例えばストーカー、DV、つまり配偶者暴力ですけれども、誰かに聞いてほしい、その対処方法については聞きたいけれども、事件としては訴えたくないという場合もあるわけです。今回のご質問は、このような場合の中の一つだと思うのですけれども、そういったものについては、警察安全相談という部門、担当係がありまして、そこは、ありとあらゆる警察に対する相談を受ける窓口になっております。これは電話でもよろしいですし、直接来ていただいてもよろしいですし、ご相談を聞いて、それに対してどういう風な対処方法が良いかといったアドバイスをしております。犯罪が成立するようなものについては被害届を出してもらって検挙するほうがいいのですけれども、そこまでは求めていないという場合がありますので、その場合は、どんな対処方法があるか、どうしたほうが良いのかを、できる限り相談者のニーズに添うようにアドバイスをしております。 ただ、この中で「被害届を出しなさい」とかいう、その経緯がちょっとわからないのでお答えできないのですけれども、「必ず出せ」とか、そういった対応はしておりません。 (藤井) そのへんは、前に比べればだいぶフレキシブルに動けるようになったということですね? (宮城) そうです、はい。 (藤井) 前の桶川事件のように、再三、被害届が出ていながらも動かなくて、殺されちゃったみたいな、そういう教訓もいろいろあるんですね。 (宮城) そうですね。 (藤井) これは伊波さんも含めて、もう一度、宮城さんなのかな。先ほどドイツの例を私が出しましたけれども、各機関の連携機関についての質問があるのですね。 例えば、ドイツの場合は、富山さんみたいなところのグループにすぐ振るとか、被害者を紹介するとか、つなぐとか、あるいは川満さんの「ひだまりの会」を紹介するとか、ネットワーク、関係機関の連携状況というのは今具体的にはどうされているんですか。 (伊波) 県のほうでやっているのは、まず県庁内でも、例えば今の配偶者の話、あるいは児童虐待、いわゆる犯罪捜査とは別の次元になってしまうのですが、行政としてできる分野があります。そういう部門である、県庁内の18機関のいわゆる連携のためのネットワークづくりを、昨年ですけれども、立ち上げたということです。 それと、あと住民と市町村との関わりが出てきますので、そのへんの周知も含めて、市町村の会議等を開いております。 あと、相談窓口に関しては、県警のほうでさまざまな分野の相談窓口のネットワークを構築してございます。ですから、その中に県のほうも入っているということですね。 ですから、県の役目としては、確かに金も出せない、人も出せない、長期間ずっと相談員を置くわけではなくて、いかに円滑に橋渡しができるか、そういうことを主に取り組んでいる状況ではあります。ですから、「ゆいセンター」なり、あるいは「ひだまりの会」含めてそうですけれども、どういう相談があったら、どこにスムーズに橋渡しができるかということに腐心している状況です。 (藤井) なるほど。宮城さん、ありますか。 (宮城) 警察のほうというか、警察、国の機関、県の機関、市町村、それから民間機関といった24の関係機関・団体が加盟しております沖縄県犯罪被害者支援連絡協議会というネットワークがあり、ここでの連携を深めて、何らかの関連情報がある場合は相互に連携をとるようにしていることがまず一つあるのですが、その中で、特に民間の被害者支援団体であります沖縄被害者支援ゆいセンターは、沖縄県公安委員会のほうから早期援助団体の指定を受けております。これは、指定されることによって警察から「ゆいセンター」のほうに被害者に関する被害情報、住所、氏名等を早い段階で連絡し、「ゆいセンター」においても被害者等のケアに当たっていただくことができるというもので、これは当然、被害者側の了解を得た上で行わなければならないという大前提がありますけれども、このような形で特に連携を強化しているところであります。実は、県警の被害者支援室と「ゆいセンター」は同じ部屋を共有しておりまして、相互連携を図りながらやっているという状況です。 (藤井) なるほど、はい。これは会場にいらっしゃる私の非常に信頼する弁護士さんからのご質問だと思いますけれども、お聞きするのは川満さんかな。これは、弁護士さんが体験されたのかな。「最近の裁判員裁判のことである。裁判長が被告人に対して、被害者の冥福を祈ってくださいと諭したことがあった。」裁判員もおそらく事前レクチャーを受けていたのかな、「同調した」と。しかし、人を殺した犯人ですよ。「成仏してください、安らかにお眠りください」と言ってほしいと思う遺族がそもそもいるのかというご質問なんですけれども、川満さん、どうですか、この話を聞いて。 (川満) いないと思います。加害者は、まず時間が経つにつれ、自分が犯した罪というのはだんだん忘れていくはずです、確実に。どんなに10年20年の刑を得たとしても、自分の犯した罪というのは、人間は自分が悪いことをしてしまったら、自分の悪いことをしてしまったことは忘れていこうという本能的な意識が働きますから、年々、自分が犯した罪を忘れていくというのが当たり前だと思います。 その中でいかに更生させるか、謝罪してもらうかということについては、裁判の中で「謝罪しなさい」とか、「冥福を祈りなさい」とか言われても、たぶん本人は本心からそうは思っていないはずです。本心からそう思っているのであれば、裁判所の中でなくても、直接、謝る機会はいくらでもあるはずなんですね。 私は主人が亡くなったときに、犯人が誰かわからないという状況の中で捜査が始まったんですけれども、最初の1年間は私は一人で過ごすことができなかったので、平日は私の母親が夜泊まってくれて、土日は私の妹が泊まってくれていたんですね。土日は妹と一緒に子どもを遊ばせに公園に行ったりしていたんですけれども、事件から約2週間くらいの間は、私はたぶん警察に尾行されていたはずなんです。やっぱり事件当初というのは、さっき藤井さんが言ったように、もしかしたら身内が犯人かもしれないという可能性もあるわけなんですね。たぶん、私も最初、何らかの形で警察に疑われていたのではないかなと思う節が多々ありまして、例えば、遊びに行った先で、2、3人のある程度年いった男の人が公園にいたり、何をするのでもなく座っていて、おかしいなと思ってチラッと振り向くとじっと私のことを見ていたりということがあったので、警察の、誰に疑いをかけるか、どうやって犯人を捕まえるかというのもあると思うんですけれども。 実際に犯人が捕まって裁判になったとしても、裁判が始まるまでの間、ある程度の期間もあるわけだし、その間に本当に謝罪の心があるのであれば謝罪をするだろうし、捕まった時点で、「僕はやっていない」とか言うような犯人が、一定期間、取り調べを受ける間に証拠とか出されて、しようがないから自分の罪を認めざるを得ない状況になって、大体の犯人が罪を認めるというような形になると思うんだけれども、罪の意識があるのであれば、最初から罪を認めるだろうし、逃げることはないと思うんです。 (藤井) なるほどね。これも質問に来ていることなのですが、富山さんにお聞きしようかな。今、富山さんがやっていらっしゃる「ゆいセンター」はいろいろな事件の被害者とか遺族が集まっていらっしゃるのですね。これは殺人事件だけではないでしょう? (富山) はい、殺人だけではないです。 (藤井) 他にはどんな被害の? (富山) 交通事故ですとか、性被害だとか、あと沖縄の場合はDVも。都民センターの場合は、DVは女性センターにお任せしているのですね、それだけ事件が多いから。だけど、地方によってはDVも、DVだけで済まなくて、子どもの虐待とか、子どもに対する性被害とかもあるものですから。 (藤井) そう考えると「ゆいセンター」というのは幅広いですね。でも、これは全国的に見ると稀なケースなんじゃないかなと思うんです。というのは、これは質問にあるんですけど、「沖縄には交通遺児の肉親を失った被害者遺族の会がないので、関係機関のいろいろ指導を受けて、遺族会を立ち上げたいんだけれどという思いがあって、いろいろご教示を願いたい」と。 (富山) 交通遺児のですか。 (藤井) 遺児ではなくて、交通遺族です。もちろん遺児も入るでしょう。私の取材では各地に行くと、やはり別なんですね。殺人事件なら殺人事件、それから交通犯罪なら交通犯罪、性犯罪なら性犯罪の当事者のグループということで、皆さん、求められるものとか要求されるもの、思いが若干の温度差があるので、これはいい意味で別々にやっていこうと。共闘できるところは一緒にやっていこうという流れのほうが、今、僕はあると思うんです。 交通犯罪であれば、例えばスピード違反をさせないとか、飲酒運転をさせないとか、あるいは信号の内輪差で子どもが轢かれてしまう事件とか多いんだけれども、それは二重信号にすればだいぶ減らせるのだという、そういう取り組みをしているのは、やっぱりその部分だけを特化して交通犯罪の遺族の方が動いていらっしゃるんですね。そういう個別性のいろいろな運動をつくっていったほうが全体の意味で底上げにもなるし、僕は活力が出ると思うんです。それをやっていくためには、富山さんはどうしたらいいんだろうというようなアドバイスはございますか。 (富山) 基本的には、交通事故と殺人とは分けたほうがいいのかもしれませんけれども、交通事故で息子さんを亡くしたお母さんの悩みというのはかなり多くて、その人たちの心のケアというのは、私たちが同じように関わっている問題で、今まで殺人というのはそんなにたくさんはなくて、交通事故で息子さんを亡くしたとか、やっと授かった一人息子を亡くして途方に暮れて、検察庁の事情聴取に対しても、一応、日程を決めてもキャンセルをなさる方とか、動けないお母さんたちがかなりいらっしゃるのですね。その自助グループはつくりたいという話は前から出ていて、交通事故の問題は問題で、自助グループはお互いにわかち合えるものがあるから、一つとして扱ったほうがいいかなと思います。 (藤井) そうすると、いい意味での分化といいましょうか、分かれながら活動していくということも「ゆいセンター」としては、それは自然の流れもあるのでしょうけれど、やはりバックアップしていきたいと。何が何でも「ゆいセンター」で全部抱えていきますよ、ということではないんですね? (富山) そうですね。できたら、最初は一緒であっても、それからだんだん分かれていくんじゃないかなと思っています。 (藤井) なるほど。僕が実際に全国を見ていてもそうなんです。これは敵対する関係ではなくて、お互いが自由に活動できるように、別々にやって、そしてなおかつ緩やかな協力関係をつくっていきましょうと。そこにいろいろな支援の方法が生まれてくるということなんですね。 そろそろ時間も来ましたが、質問で幾つかあるのは、今、犯罪被害者週間でたまたまこれは基本計画の中で決められているから国の啓発活動あるいは自治体の啓発活動として、これは義務として行政に対して課せられているんです。ですから、ここにいる方々はみんなそういったものを背負ってやっていらっしゃるのですね。この被害者週間も含めて、一人ひとりの国民というか住民というのは、どのように、何をしていったらいいのかと。確かに、これ、僕、冒頭に言いましたけれども、これは例えば「割り箸を使わないようにしましょう」みたいな運動ではありませんからね。「ペットボルトをちゃんと捨てましょう」とかいう運動ではないので、自分たちがどうしていったらいいのかというのは、その方向性というか、やはり深い問題だと思うのです。そのためにはどうしていったらいいのかという質問が多くて、これについて一言ずつ何か提言といいましょうか、この国民大会、どういう意義があるのかということも含めて、伊波さんからお話を2、3分ずつしていただいて、このシンポジウムを締めたいと思っておりますが、どうでしょうか。 (伊波) 沖縄県でやっていることは、先ほどネットワークの話もありましたけれども、県民に対する啓蒙啓発。ですから、できることは何かという以前に、講習会あるいは研修会を開いているのも、犯罪被害者の生の声を聞いてもらう。県警は「命の授業」というのもやっていらっしゃるのですけれども、そういう方の話を聞くことによって、犯罪被害者はどういう思いでいるのかということ、そのへんを広報として、こちらとしてはやっていきたい。本来、これは「国民のつどい」だけではなくて、日常的な業務の中においても、何かの機会にパネル展なりやっています。そういう意味で、県として皆さんに、犯罪被害者の立場はこういうものでありますよ、ということを伝えていきたい。実際、どういう対応の仕方をすればいいのかというのが、はっきり言って、私もよくわかりません。ですから、逆にいうと、こういう場で直にお話ししながら、こういうこともあるんだな、ということを身をもって知っていく、そういう理解をしていくことが必要ではないかと思っております。 (藤井) ありがとうございます。では、宮城さん、お願いします。 (宮城) 被害者支援というのが警察オンリー、あるいは別のそれぞれの機関だけでできるものではありません。被害者の立場というか、その心を知るということが一番大事なのですが、それはなかなかできるものではありません。私も今のポストにこの春から就いているのですが、被害者の心情をいくらかは知れたかと思う一方で、私が知った以上に被害者の心情がもっと深い所にあるということも知った次第です。それは経験で補っていくしかないと思っております。経験で補うためには、先ほど藤井さんも話していましたが、長いこと携わっていくことによって、そういったものを知っていくことができるのだと思います。 それは、自助グループの川満さんとか、実際に被害に遭われた人たちのお話を聞くとか、そういったことが、やはり非常に大事なことなんです。今日、このシンポジウムに参加された皆様方は何らかの形で、被害者支援というのはこういう風な関係機関もある、あるいは民間団体、あるいは自助グループがあるのだということを知ったと思います。知ったということは、皆様方は知らない人たちより一歩も二歩も進んだことになるわけです。これを皆様方の胸の内にとどめることなく、「実はこういったことがあるんだよ」ということでお話をしていただいて、さらにこの話の中から、こういった会合がある、こういったシンポジウムがあるということも話していただき、そのときには、是非足を運んでいただいて、話を聞くことによって、被害者という立場をもっと知っていただけると思います。 私は、警察という立場もありますが、家に帰れば一人の県民です。被害者支援というのは、我々一人ひとりが支えていくというのが一番大事でありますので、今日のこのシンポジウムでの話をご理解いただいて、皆様方がまた次の啓発する方々になっていただきたいということを是非お願いしたいと思います。以上です。 (藤井) では、村上さん、お願いします。 (村上) 今日は、国と県と警察が主催の会なので、敢えて言わせていただきますと、機能的なネットワークと、あと情報提供を警察とか行政にはお願いしたいというふうに思っています。確かに、今、ネットワーク会議とか連絡協議会とかあるのですが、それが本当に機能しているかというと、日本はまだ機能していないと思います。先ほど藤井さんのお話でもあったように、ドイツの例とかもありましたが、まず被害者が一番最初に接するのは警察で、最初は警察に頼って、何とかこれを事件にしてほしいと思うのですけれど、だんだん孤立してくるという被害者の方をたくさん見ています。本当に自分が今欲しい支援を誰がしてくれるのかといったら、その人はわからないと。中には、もう警察に事情聴取に行くのもきつい、警察から電話がかかってくるのももう嫌だと思って、それで事件にしなくていいと断ってしまった被害者の方も例としてはあります。 まず最初に、被害者の方には民間の支援団体もあれば、臨床心理士とか精神科医の支援も受けられる、また弁護士の支援も受けられる。その連携をとるときに、できるだけ顔が見える連携をとれるような、もっと機能的なネットワークが必要ではないかなというふうには思っています。先ほど、弁護士ジプシーの話もありましたけれども、確かにそういう話もたくさん聞くのですね。被害者支援というのは「はい、やりましょう」と言ってできるものではなくて、自分が痛みを受けていない以上、学ぶこと、勉強することが必要で、弁護士も被告人の弁護というのは歴史がありますけれども、被害者の援助というのは確かに歴史がないです。そういう意味では、看板を見て、弁護士のところに行っても、そこで二次被害を受けたという声が確かに聞かれて、それは本当に弁護士会としても取り組まなければいけない問題だと思っているのですが、ただ被害者の支援をちゃんとやっていこうという弁護士も数います。できれば、そういうところへのつながりというのを今後考えていかないといけないなと、私自身のことも思いながら、思っています。そういう情報を提供して、ネットワークをつくるということがいろいろな機関では必要だと思います。一人ひとりができることになると、被害者の名誉やプライバシーを尊重することだと思うのですね。よく新聞とか報道される事件は、どうしても興味本位の報道になって、そこには被害者がどんな人だったのかという興味本位の視聴者もいれば、マスコミもいます。その中で、被害者自身も、これだけ報道されるのであれば告訴を取り下げたいとか、被害を訴えたくないという被害者も確かにいますので、被害者が声を上げていける世の中にするためには、被害者の本当の痛みは何なのかということを一人一人が考え、名誉とプライバシーを尊重していくということが必要ではないかなというふうに思っています。 (藤井) ありがとうございます。では、伊藤先生、お願いします。 (伊藤) 「被害者に対する心のケア」、いろいろなところで、ジャーナリズムでもそうですけれども、一番簡単に取り上げられる言葉として聞くことですが、その実、やはり一番難しい、結局は、心の問題にあらゆる問題が帰結していくのかなと思いますので、そういう意味では本当に心のケアというのはとても難しいことなんだろうというふうに思っております。先ほど川満さんからも指摘されまして、そういうことに我々専門家は逃げずに、今後も研鑽していきたい、役に立てるようになっていきたいと考えています。我々の心理学の研究から考えても、また今のような経験から考えても、一人ひとりにできることというふうに言いますと、支援をするときに、どうしても支援者、我々のほうの気持ちというのも必ずあるのだと思うんです。援助を受ける側の気持ちに添っているつもりでも、自分自身の、例えばうまく援助ができるだろうかとか、早くこんなつらい話を聞いている状況から去ってしまいたいというような不安とか苛立ち、そういうものを和らげるために、その場しのぎの言葉をかける、こういうのは支援として有効ではない、むしろマイナスだということもデータとしては出ています。だからといって、声かけは難しいから手をこまねいていればいいかというと、また別の研究では、落ち込んでいる人に休む期間を与えないことはもちろん負担なのですが、あまりに長く休息を与えすぎることも、次に向かおうというやる気ですね、これが起こってこない原因となるのです。「被害がつらいから、大変だから、もっと休んでいていいよ」というふうに優しい環境を与えすぎることもまた社会復帰へのやる気を削ぐことになるというわけです。 ですから手をこまねくのではなくて、被害者の様子を見ながら、被害者に添った支援というのは必ず必要なのだろうなというふうに考えています。そのときに、我々支援する側の気持ちをいかにうまくコントロールしながら被害者一人ひとりの方に添えるか、これが問われてくるのかなと思います。 (藤井) ありがとうございました。富山さん、お願いします。 (富山) 残念ながら、「ゆいセンター」の名前はあまり知名度がなくて、警察だとか、病院だとか、そういうところのリーフレットを見てとか、あと警察のほうからリーフレットを渡されたから電話をしましたという方のほうが意外と多くて、私たちは新聞を見て「こちらのほうに連絡してみましょう」と直接に電話を入れても、わかってもらえないかもしれないから、というので葉書を書いて、リーフレットと一緒に送って、「何かあったら連絡ください」という形でやっている状態です。もちろん、名前が知れるともっといっぱいいろいろできるかというとまたあれですけれど、沖縄の古くからある「ゆいまーる精神」というのは大切だと思って、私たちの名前も「被害者支援ゆいセンター」という名前がついていますので、私たちがやっていることは、隣近所のおばさんとかお友達がやるような、本当に小さいことから始まっていますので、今日いらしてくださった方がそういうことをまた耳にして、「ゆいセンター」のことをいろいろお話ししてくださればもっと広がるかなと思っています。 一人ではない、ということですね。犯罪に遭った人たちにお伝えしていただけたらいいなと思っています。以上です。 (藤井) ありがとうございます。では、川満さん、お願いします。 (川満) 今日いらしている広報相談課被害者支援室長の宮城正明さんとは今回初めてお目にかかるのですけれども、実は、私は3年前に「ひだまりの会okinawa」を立ち上げるときに、ある方を通じて、被害者室の室長、宮城さんの前の方なんですけれど、ご挨拶に行ったのですね。こういう形で私は被害に遭って、こういう形で活動したいので、こういう自助グループを立ち上げましたのでよろしくお願いしますということで、一応、連携をとっていきたいという気持ちもあってご挨拶に伺ったのですが、そのとき返ってきた言葉が「自助グループといっても、どんなことをするのかも見えてこないし、どんなメンバーが集まるかもわからないし、どんな協力ができるか、今のところ、わからないよ」と言われて、はなから自助グループの存在感のなさをまざまざと見せつけられたのですね。その当時は連携をしていくとか、こういったシンポジウムをしていくとかということは、沖縄では考えられなかったんですけれども、3年経って、基本計画もできて、裁判も変わってきて、自助グループの立場も少しずつ変わってきている中で、みんなで連携し合っていいものをつくっていけたら一番いいんじゃないかなと私は思います。「誰のため」というと、被害者や遺族のためになることだったら、一人でもいいから力になってあげたいというのが私の思いです。 先ほど、質問票にあった自動車運転事故で亡くされた方の遺族の会をつくりたいという話、以前も私は聞いたことがあるのですが、いろいろな自助グループの代表の方と接していて、一番、皆さんが抱えている問題はやはり資金なんですね。どんな会でもそうなんですけれども、会を動かすためにはやはり資金が必要です。そのために、どうしたらいいのかとか、代表は誰がやるのかとか、どういうふうな形で会費を集めるのか、どういう基準で会員を集めるのかとか、ある程度、会としての線引きをしていかないといけないと思うんですけれども、それをやっていくためにはかなりのパワーが必要になってきます。自動車事故の犯罪で亡くされた遺族の方の会をつくりたいという方がもしいらっしゃるのであれば、そのへんもよくお考えになって、いろいろな方のアドバイスをいただきながら活動を進められていけたらいいんじゃないかなと、私自身、心の中では応援しています。 (藤井) できますよ、それは。日本全国にたくさんあって、今、交通事故の犯罪の被害者遺族のグループ、すごくたくさんあって、入っている方もたくさんいらっしゃいますから、これは必ずできると思うし、沖縄でも当事者の方が頑張って立ち上がってほしいと僕は思います。 これは他の犯罪、性被害でも何でも、とにかく最初の一人が手を挙げること、川満さんもそうですけれども、最初の一人が何とか手を挙げることがすべての始まりで、そこからたくさんの何百人、何千人という、同じ苦しみを持った人がつながっていく。そこには、必ず当事者以外にもそれを支えたい人、応援したい人、何とか自分が関われないかと思う人もどんどん集まってきますから、僕はその流れというのはとても大事にしていきたいというふうに思っています。 それから、資金ということを川満さんはおっしゃいましたけれども、本当なら、これはここにいらっしゃる会場の方も、もしかしたら、今日、犯罪に遭うかもしれないんです。いつ、誰がどこで犯罪被害者になるか、わからないんですね。これは加害者になる以上に、何万倍もリスクはあるわけです。そういう意味では、本来であれば、これは当事者がお金を出し合ってやるのではなくて、行政がもっとお金を出してやるべき問題です、これは。ですけれども、なかなか今それがない。冒頭にも言いましたけれども、事業仕分けで削られているみたいな、そういう状況がある。それ、やっぱりおかしいんじゃないかという声も仕分け人に言いましょうよ、皆さん。それを1時間の結果で、要するに、この事業とかだいぶ小さくしろということですよ、はっきり言って。内閣府の人、そうでしょう? そういうことというのは、やっぱりやってはいけないんですよ。民主党というか、命を大事にするという、自殺する人とか犯罪に遭う人を大事にしていこうということは、これは党の方針でも、マニュアルにもあるわけですから、公的なお金は削ってはいけないというふうに思っています。 今日は時間がないのでお話し足りませんが、たくさんまだまだ犯罪被害者の権利拡充もあります。それを支援する人々の領域もまだまだたくさん余白が残されています。一例を挙げても、最近、押尾事件ってあったでしょう。一緒に薬物をやっていた女性の死因に関しては、司法解剖したけれども、遺族はよくわからないわけです。不審死です。日本は、解剖率というのは、これは宮城さんがご専門ですけど、行政解剖も司法解剖も入れたら2%くらいでしょう。これは『チームバチスタの栄光』を書いた海堂尊さん、最近、ちょっと親しくしているんですけど、彼が日本を「死因不明社会」と命名しているんですね。死因不明ということは、遺族にとって一番つらいことなんです。なぜ亡くなったかわからないんですから。そうした社会に僕らは今いるんだということも、僕らとしては認識する。それが犯罪被害者の理解、ひいてはそれをどう支援するかという方法論にも僕は結びついていくことだと思いますので、何度も繰り返しになりますが、今は学んでいきましょう。この犯罪被害者の声がこの10年間、かなり蓄積されてきました。そこからまず学ぶということをやっていきましょう。この会がそのための今日は一つのステップになればいいなと思っています。今日は、皆さん、ご清聴、ありがとうございました。 (パネラーの)皆さんも今日はありがとうございました。最後に、前のパネラーの方に拍手をお願いします。 Copyright (C) National Police Agency. 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